カメラ選び

私の写真趣味の全てはこの一枚から始まりました。息子が専門学校に入学してすぐに、撮影用のカメラが欲しいと言ってきました。いいよ、と言ったあとで確認したら、30万円ほどするらしい…。マジかよ、いきなりそんな高いカメラ要るんか、最初は安いのにして慣れてから買おうよ、と一杯言いたいことはあったんですが、グッと堪えて笑顔でOK。親父の意地ですw 後から思えば本人も相当考えておねだりしたんですよね。最初に組み合わせて買ったのはサードパーティ製の安いレンズでした。でもそのカメラで撮ってくれた私たち夫婦の写真を見たとき、お世辞抜きで感動したんですよね。こんな写真が撮れるんか。これはスマホでは無理やな。思い切って買ってあげてよかった、と。それから息子が楽しそうに写真を撮る姿を微笑ましく見ていたんですが、あまりに楽しそうなので段々羨ましくなり、そこから私がカメラにハマるのに時間は掛かりませんでしたw

本格的にカメラを始めて一年少々の私ですが、この一年でかなりの台数のカメラを買い込んでいます。初心者ならではのカメラ選びの視点があると思いますので、ご参考までにまとめてみます。

目次

コンデジ

普通の人は、「スマホで撮るよりちゃんとしたカメラの方が良い写真が撮れるらしい」というところからスタートだと思います。これは全く正しく、だからこそ最初のカメラ選びが肝心です。カメラにはレンズを交換するタイプの本格的なモデルと、レンズを交換できない固定式のエントリーモデル(コンパクトデジカメ、略してコンデジ)があります。最初は入門機からスタートするのがオススメなんですが、それでも一定(分かりやすく言えば10万円以上)のハイレベルのカメラを買うべきなのです。それは明らかにスマホとの違いを実感できなければガッカリするから。これでハマらなければ支出は最低限に抑えられますし、ハマればどうせ後から色んなカメラを買い足したくなりますから、どちらにしろ無駄にはなりませんw 以下に私のオススメ機種をご紹介。

FUJIFILM X100V

ご紹介しておいてなんですが、既にこのカメラは手に入りません。しかし2024年の前半に後継モデルが発売になる予定です。そして、その後継も間違いなく”買い”のモデルです。なんせこのカメラは良く写る。一周回って、今一番使っているのはコイツなんですよね。23mm単焦点(フルサイズ換算で35mm)という使い勝手の良さに加えてF2.0の明るさ。そしてFUJIFILMファンが愛して止まない17種類ものフィルムシミュレーション。エモい写真が簡単に綺麗に撮れる、という初心者にとって夢のようなカメラです。何も考えずにシャッター押せば撮れちゃうから、全くカメラ触ったことない初心者でも大丈夫。そしてプロのカメラマンですら一目置く表現力。私は誰かに相談されたら全力でこのカメラを勧めています。

RICOH GR3

入手困難なFUJIFILMのX100Vに代わってコンデジの支持を一手に集めているのがこいつ。X100Vが480gあるのにこいつはなんと260g。iPhone15 Pro Maxが221gなので持った感じは殆どスマホ。お出掛けの時にカバンに放り込んでおいても全く気にならないレベル。そして写りはあの森山大道さんがこれだけ使って写真集出すレベルなので推して知るべし。画角が28mmなのでやや広角ですが、お好みで40mmモデルも選べます。バッテリーの保ちが悪いのだけがネックなのですが、カメラはとにかく持って出ることが大事なので、軽さは正義なのです。

Leica Q3

初心者でいきなりLeica買う人はいないでしょうがw、最終的にまあまあの確率で行き着くコンデジの頂点ですね。お値段なんと968,000円! どうですか、FUJIFILMやRICOHのカメラが安く思えますよねw 10万円のカメラの10倍よく写るわけではないんですが、HERMESのカバンと同じでお金持ちが自己満足するブランド価値というヤツですね。まあ確かに綺麗に写るんですが、私は使って5分で飽きましたw

一眼レフ

レンズ交換式の本格的なカメラです。カメラを使う目的はやっぱり綺麗にボケる写真を撮りたいからですよね。となると、単焦点レンズを使うことになります。カメラボディとの組み合わせで安くとも30万円コースになるので、思い切らないと踏み込めないかもしれません。初心者は選べないと思うんですが、まずはどのメーカーのカメラを買うかを決めないといけません。これは聞く人によって答えが違う難しい問題なんですが、独断でオススメを挙げます。

FUJIFILM X-H2

FUJIFILMをオススメする理由は、色がエモいから。初心者はLightroomで現像なんて面倒なことしないと思うので、最初からそれっぽい画が撮れるに越したことはありません。APS-Cというフルサイズより一回り小さなセンサーを使ってるんですが、その分カメラボディもレンズもコンパクトで軽いものが多い。何度も言いますが、軽さは正義なんです。エントリーモデルにX-S20という手軽な機種もあるんですが、結局高画素なモデルが欲しくなると思うので、最初からフラッグシップモデルを買うことをオススメします。最近はこのX-H2にXF500mm F1.0という明るい単焦点レンズ付けてポートレート写真撮って楽しんでます。撮りたいものは人によって違うと思うんですが、ストリートスナップ・人物・食べ物・風景・お花・鳥・星、何でも来いのオールマイティさも嬉しい。後で買い足すことを思えば最初から良いの買っとけ、が私の推しです。

SONY α7 Ⅳ

息子に買ったのもこのモデルなんですが、今でも売れ筋ランキングの上位に来る人気のカメラです。APS-Cとフルサイズを比べれば、やっぱりフルサイズ機が欲しくなります。CANON・NIKON・SONYが御三家ですが、SONYがマウントの関係で一番コンパクトで軽いんですよね。それと若い人は動画を撮ることも多いのでSONY機を買っておくのが間違いないです。

NIKONは過去のレンズ資産を活かしたいベテランさんが選ぶイメージ。ちょっと無骨でクラシックなデザインですよね。最近はカメラ女子でもNIKON派の人も多いです。角張ったダイアル多めのデザインがマニア心をくすぐるんでしょうね。

個人的にはCANONはオススメしません。サードパーティにレンズマウントを公開していないし、値付けとかが嫌らしいです。みんな業務には使ってるけど、愛されてないイメージw

センサーのサイズで分類すると、中判 > フルサイズ > APS-C > マイクロ4/3、となるんですが煩雑なので割愛。

レンジファインダー

Leica M11

初心者には関係ない世界なんですが、そのうちどこかで聞く名前、それがライカ(Leica)です。大昔の暗幕被るタイプの大判カメラしかなかった時代に小型で屋外に気軽に持ち出せるコンパクトカメラを作ったのが始まり。1912年のバルナックライカと呼ばれるモデルがそれです。なのでLeicaは基本的にコンパクトで写りが良いのが何よりの特長。つまるところはそのレンズが魅力なんです。Leicaは一度潰れかけてHERMESの傘下に入ったことがあるんですが、そこから上手く建て直して上手にブランディング商売を展開しています。なのでお値段が高くなるのは仕方ないんですよね。信じられないかも知れませんが、このM11というカメラはボディだけで140万円、更にレンズが120万円もします。正気の沙汰ではありませんよねw でもね、クルマを買うことを思えば、と思っちゃいます。デジカメは買ってしまえば特に維持費が掛かるわけでもないので、お手軽な趣味だと思っています。奥が深いので飽きるということもありません。写真を撮っていて段々分かってきたんですが、写真は撮る行為そのものが既に楽しいんですよね。極端な話、レンズに蓋して撮れてない状態で帰ってきても楽しい。今どきはシャッター押せば勝手にカメラが最適な露出を合わせて撮ってくれますが、手を掛けてマニュアル感覚で撮るのがまた楽しい。クルマで言えばAT車じゃなくて、あえてMTのスポーツカーを乗る感覚。それがこのLeicaの魅力です。レンジファインダーというのは1912年当時は画期的な方式だったと思いますが、現代では特にメリットはありません。それでもこれだけ多くの人がLeicaを愛して止まないのは、ひとえにLeicaの撮影体験によるもの。構図を考えて、カメラを構え、絞りとピントを手で合わせる。そして小さくコトッというシャッター音で撮れるその画のエモいことエモいこと。カメラ界のフェラーリです。清水の舞台から飛び降りるつもりで買う価値は大いにあると断言しておきます。

中判

HASSELBLAD X2D 100C

上述したようにフルサイズセンサーの上に中判というカテゴリーがあります。普通はここまで手を出す人は少数で、商業写真を撮るプロか、よほどお金に余裕のあるハイアマチュアか、というところです。主な製品はFUJIFILMかHASSELBLADかの二択になります。ちなみに両モデル共にセンサーは共通。なので画像の処理エンジンとレンズの違いで選ぶことになります。FUJIFILMの方がレンズが手に入りやすいのと後のメンテナンスの心配がないので安心ではあるのですが、やはりここまで来るともはや買い手の満足感が最大の購入ポイントになるので、私は迷わずHASSELBLADを選択。スカンジナビアンデザインがオサレでカッコイイ。グリップを握った感触も良好で、何より軽い。大きさも感じさせません。何とも言えない質感の高さで、買ってよかったと心から思えるカメラです。ネックはレンズが手に入らないこと。直近の新世代レンズが3本出ているんですが、何とか手に入ったのは38mmだけで55mmと90mmはオーダーしても入荷に時間が掛かります。HASSELBLADは中国のDJIが買収したので経営に問題はないはずなのですが、日本国内のショールームを閉めてしまって直接の接点がなくなったのも不安材料です。でもカメラやドローンの新製品は投入しているので大丈夫だと信じています。肝心の撮れ高ですが、素晴らしいのひと言。1億画素のもたらす圧倒的なクオリティには溜息しか出ません。ただし色に過剰なメーカー補正は入らず、あくまでもナチュラルな色調。後はRAW現像でお好きにどうぞ、ということなんでしょうね。暗部の耐性はAPS-C機とは全然違うので、それだけでも買って満足です。

フィルムカメラ

Leica M3

フィルムカメラはM3に始まりM3に終わるというくらいの世界の名機。この完成度が70年も前に実現されていたことに驚きます。手にしたときのずっしりした重量感。覗いたファインダーの美しさ。巻き上げレバーの手応え。静かで上品なシャッター。そして何よりもうっとりする撮れた写真の味わい深さ。Leicaの良さは豊富なMマウントレンズという資産。新品レンズはビックリするような高値が設定されていますが、古いレンズならそれなりの値段で大事にされてきた銘品と出会えたりもします。私も大阪のマツモトカメラという信頼の置けるお店でSumilux 50mm 1st、いわゆる貴婦人と巡り会えました。この組み合わせのカメラを眺めているだけでえもいわれぬ深い満足感が得られます。いまどきこんなにも幸福感が手に入ることってなかなかないんじゃないでしょうか。カメラ好きなら一度はこのフィルムLeicaを手にしてみていただきたいです。

HASSELBLAD 500C

実は上記のLeica M3を購入してオーバーホールを待っている間に待ちきれずに買っちゃったのがこのHASSELBLAD 500Cですw 500C/Mというマイナーチェンジモデルが有名なんですが、この個体は後期モデルでスクリーンが交換できるタイプ。好みもありますが、私はミノルタのアキュートマットという中央の楕円形レンズでピントを合わせるタイプが見やすかったです。でもこのカメラ、全員が最初は戸惑うはず。何といっても左右逆像なんですよね。なので右に寄りたかったら左にカメラを動かす、なんていう直感に反した動作が求められるのでウロウロ右往左往してカミさんに笑われました。ピントの山も浅いのでとにかく撮るのが難しい。当然ながら動いている対象物はとても無理です。レンズもオールドレンズだから、では済まされないレベルで逆光耐性が弱く、光が回りまくります。露出を図ったつもりでも、ちょっとでも光が足りないと真っ暗。仕上がった現像を見てガッカリすることも多い。それでも、綺麗に撮れたときの深い色乗りと表現力はさすがの中判フィルム。現代の押せば写るカメラに慣れていると振り回されるとんでもないじゃじゃ馬ですが、だからこそ手懐けたときの達成感もひとしお。写真を撮る、という行為そのものが至高のエンターテインメントになります。少しだけ撮った写真をご紹介しておきます。

番外編:フィルム+デジタル

HASSELBLAD 907X & CFV100C

最後にトドメの番外編カメラを一つ。これはHASSELBLADのデジタルバックというモデルです。普通の一眼ミラーレスカメラとは一風変わった見た目ですが、それだけならHASSELBLADは元々こういうボクシーな形なので特筆するところはありません。このカメラの何が凄いかというと、なんと古いフィルムカメラに装着して、フィルムカメラをデジタル化できちゃうのです。

カメラの前の部分が古いフィルムカメラになっているのがわかりますか? デザインの完成度もあって全く違和感ありませんが、これ前部は1960年代製、後部はバリバリの現行新製品です。こんなカメラは他にありません。この組み合わせだと面倒なフィルムの装着を気にせず、心ゆくまでバシャバシャとシャッターを切りまくることができます。正に理想のオールドカメラ。撮れ味はフィルムに比べるとデジタル感は出ちゃいますが、撮影体験は唯一無二のHASSELBLAD感を堪能できます。

最後に

つい最近、写真の上手い友人に会ってカメラ談義になったのですが、彼は入門機と言えるコンデジ一台で個展レベルの写真を撮りまくっていました。高価な機材を買いまくっているくせに大した写真が撮れているわけでもない自分が恥ずかしくなりましたが、写真趣味の楽しみ方には色々な流儀があります。機材を愛でる入り方をする方も多いと思いますので、機材選びの参考になればとここまでまとめてみました。

面白いもので、カメラマンが10人いると十人十色の好みがあります。撮る対象も、ストリートスナップ・ポートレート・自然の風景・花・鳥・星・飛行機・スポーツシーン、などなど。カメラだって高いカメラが偉いわけでもなく、チェキで凄い作品を発表している方もいらっしゃいますし、森山大道みたいにコンデジ一台で世界の有名写真家になっちゃった方もいらっしゃいます。それだけ奥が深く、また他人との比較ではない自分なりの楽しみ方を見つけられる趣味なんですよね。

私は写真を撮りだしてから、大袈裟に言うと物の見方が変わってきた気がします。ものごとの欠点ではなく、良いところを探す。人とは違う視点を見つける。これって良いことだよなと感じています。歳を取っても脚が動く限りはどこにでも出掛けて自分だけの一枚を撮り続けたいですね。

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