正直、中国に対する個人的な心証はよくありませんでした。アメリカによる露骨な中国封じ込め政策を目の当たりにして、もっとやれとけしかける思いでした。これ、嫉妬心なんでしょうね。落ち目の日本と隆盛を極める中国との差を認めるのが嫌だったのです。ここのところの中国の不動産バブル崩壊は事実でしょう。鄧小平の改革開放政策で右肩上がりに成長してきたストーリーに大きな転換点が訪れたのも事実です。だからといってこのまま中国の成長が止まって失速に陥るというのはあまりに穿った見方と言わざるを得ません。そのことに思い至ったのは、愛読しているメルマガの記事を読んだからです。
一読して驚きました。え、この期に及んで中国上げかよ、と。しかし最近ものの見方を疑った方がいいよなと思えることが幾つか続いていたため、自分の先入観を疑う気持ちがあったんですよね。これまで信じてきた直感とは異なるけれど、ひょっとしたら間違っていたのは自分の方かも知れない、と。
例を挙げます。
- ウクライナ戦争の責任はアメリカに多くがある
- 小泉進次郎が次期総裁に相応しいかもしれない
- 齊藤元彦前知事は良い人なのかもしれない
どれも世間での主流の見方とは逆行していますよね。ウクライナ戦争のことは前のエントリーで書いたので改めて触れませんが、個人的には石破茂や高市早苗より神輿に相応しかったのは小泉進次郎な気がします。もちろん国会答弁等でボロボロになるでしょうが、あの安倍さんだって一回目はボロボロだったんです。若い人に経験を積ませて成熟を待ってもいいんじゃないでしょうか。裏金や統一教会なんてネガティブなことに時間を使ってる場合じゃないんです。さっさと後ろ向きな処理は片付けて、大事なテーマに取り組んでほしい。次代を作るのはやっぱり若い人に任せた方がいい。
齊藤元彦前知事の件も、実際のところは知り得ませんが、これだけ大きな騒ぎになっているのに明確なパワハラのエビデンスが出てこないのはおかしくないですか? 改革派の知事の足を守旧派が引っ張っているのが真実なのではないのか。少なくともメディアの論調が全く信用ならないのはもうこの国の常識です。一方的なバッシング裏には必ず何らかの意図が隠されていると疑った方がいいのです。
さて、話を中国に戻します。私も中国共産党の日々の振る舞いには苦々しい思いを抱いています。どうして今さら領土問題で他国に現状変更を強いるのか。中国共産党の意図に沿わない人間への不当な弾圧は先進国の振る舞いではないし、人権を尊重する意識の薄い国をどこまで信用できるのかという懸念は常にあります。それにしても、アメリカの中国封じ込めも、考えてみれば随分手前勝手な話だよなとも思うのです。中国の経済発展を援助したのは他でもないアメリカ自身で、それが自分たちのポジションを脅かすレベルに至ったからといって手のひらを返したように叩き出すのは大国のエゴにすぎません。これまで自国の利益になるから中国の発展を後押ししたんだよね。それが世界のためになるのなら、そのまま発展を黙って見守ればいいじゃないですか。思い返せば、同じように援助からバッシングに急展開して痛い目に遭った国がありましたよね。そう日本です。今の中国バッシングはあの時のジャパンバッシングそのまま。そう考えると、バブル崩壊後に失われた30年の苦難を味わった日本と同じ未来が見えて、中国が気の毒に思えてきました。
しかしながら上記の藤沢数希氏は、中国株のバリュエーションの低さ、中国の一人当たりGDPの低さ、中国元の為替レートの低さ、という三つの理由から、日本のような長期の調整局面は必要ないと予測します。失われた30年どころか、ほんの3年か5年程度で早期回復するし、その調整局面の間も4、5%程度の経済成長はし続けると。確かにね。何より中国の一人当たりGDPがアメリカの1/6というのはあまりに低すぎます。仮にアメリカの半分程度の水準まで成長するとしても、今の3倍ですよね。となれば世界を見回しても相変わらず有望な成長マーケットと言えるのではないでしょうか。
個人的にはHUAWEIやXiaomiのスマホは凄い(SAMSUNも凄い)と思いますし、DJIなんて圧倒的な製品開発力があります。あと中国政府の金盾に守られているとはいえ、世界を牛耳るアメリカのIT巨人に対抗できるのは中国のIT企業だけです。Ali Baba、テンセント、DiDi、といったITサービスのパワーは凄いし、SHEIN、TemuのECサイトの破壊力も凄い。幾らアメリカが封じ込めを目論んでも、今や世界中のサプライチェーンに深く組み込まれた中国経済を完全にパスすることなんて不可能だし、そんなことをしたらアメリカや他の先進国だって甚大な損害を被ります。となれば、中国経済をグローバル経済に密接に統合して、お互いに共通の利害関係者になってしまうのが安全保障的にも得策なんじゃないでしょうか。まあ高級品の製造能力を制限してくれた方が日本にチャンスが回ってきて美味しいとは思いますがw
ということで一晩じっくり考えて、私も藤沢数希氏推薦の香港ハンセン指数連動ETF(The Tracker Fund of Hong Kong (SEHK:2800))を買ってみました。これで中国の経済発展に腹も立ちませんw
結局のところ、世界の各国にはそれぞれ固有の歴史と今日までの文化的背景があり、それを欧米の価値観で簡単に測るのが間違いなんですよね。中国のあの巨大な国土と人口をまとめるには、ある程度強権的なコントロール装置が必要なのでしょう。それが中華の皇帝支配のDNAであり、中国共産党の正当性なのです。イスラム国家にだって、彼らなりの規範と寄って立つ価値観のベースがあり、異教徒に否定されたらそりゃあ仲良くはできません。必要なのは違いを認める寛容性なのであって、それが欠如いるのはむしろ欧米先進国の側なのです。
じゃあその異なる価値観の国々がどうやって協調していくか。それはもう商売しかないじゃないですか。だから日本は黙って商売人に徹すればいいんです。商売人は、腹の中でどう思ってようが、相手の悪口は言いません。自分の商品・サービスを買ってもらったら、頭を下げるんです。決して押し付けや強制で商売は上手くいかない。必要なのは、相手の不足や不満に耳を傾け、必要なソリューションを提供すること。これが一番分かりやすい良いお付き合いというものです。我々は商売に関わる仕事をしていることを誇りに思い、世界に商売の輪を拡げましょう。それが子どもや孫たちの世代に平和で豊かな社会を受け渡す唯一無二の方法なのです。
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