雑いアメリカ

最近アメリカが雑いと感じませんか? インターネットがこの世に登場した1995年以来、いや正確にはその前にコンピュータが世の中に影響を持ち始めてきてから、ずっとアメリカは世界を席巻してきました。そのイノベーション力は圧倒的で、あれだけ我が世の春を謳歌した日本経済はすっかり落ちぶれ、ITでリードするアメリカの後ろ姿を指をくわえて眺めるばかりでした。アメリカは輝いていましたよね。Google・Amazon・Facebook、そしてApple。きら星のごときスターたちが次々に現れ、その活躍ぶりは眩いばかりでした。

雲行きが怪しくなってきたと感じたのはいつ頃でしょうか。アメリカの市街地、特にサンフランシスコが荒れているというニュースや動画を目にすることが増えました。ここ一年くらいのことでしょうか。あまりに不動産賃料が上がりすぎて、もはや普通の小売り店や飲食店では採算を取ることが難しい。それに輪を掛けて街の治安の悪化。ドラッグや薬の依存者が増えて、街の空気が荒んでいく。あの有名なケーブルカーのターンテーブルがあるユニオンスクエア近辺がゴーストタウン化していると聞いて、本当に驚きました。これは一時の変調にすぎないのでしょうか?

皆さん、最近Amazonで買い物してますか? 私はめっきり減りました。どうしても早く欲しいものやそこまで高額でないものは今でもAmazonを使うこともありますが、可能ならヨドバシカメラや他の専門ショップを使います。明らかに意図的にAmazonを避けるようになりました。それは直営ではないマーケットプレイス店舗のクオリティがあまりに低くて信用できないからです。「石が届いた」なんて悪質な詐欺のケースは少数でしょうが、それでもお金を払うに値しないチープな商品が多すぎて、明らかにお買い物体験の質が下がっています。

ようやく最近テスラ車を買うことのリスクが知られてきた気がします。これも登場当初から非常に懐疑的でした。どう見ても自動運転と呼べる代物ではないのに、平気でAuto Pilotを謳い、そして多数の事故を招いている。どうして訴訟大国のアメリカで集団訴訟が続発しないのか、不思議です。

他にも同様のケースは多数見受けられます。要するに、アメリカは”雑い”んです。

各国のカルチャーを語るうえで、タイト/ルーズという表現があります。タイトなカルチャーの代表例が日本であり、ルーズなのはアメリカです。日本は何かを始めるにあたり、まず安全かどうかを最重視します。そしていきなり世の中を大きく変えないようなソフトランディング手法を採用します。対してアメリカはとにかくイケイケ。法律がなくてもまずは新しい技術やサービスは試す。試して問題があれば、後から法律や規制を修正する。これはずっとそうで、両国のカルチャーの土台が異なることがもたらす大きな違いです。

勘違いされますが、決してどちらが正しい・間違っている、という話ではないのです。ただ、キャラクターの違いというだけの話。しかしながら、永らく日本を語る論調は明らかに日本が間違っていてアメリカのやり方が正しいという方向にミスリードされてきたと思います。仕方ない部分もあります。この30年程は明らかにアメリカのやり方が上手くいっていましたからね。だからメディアはやたら日本を悲観的に非難してきましたよね。やれ「失われた●●年」だとか「衰退国家」だのと先行き不安を煽る記事を目にしない日はありませんでした。しかし客観的に見て、今の日本はそんなに悪い状況なのか? 本当にアメリカは上手く行っているのか? 実態はそんなに単純なものではないと思えます。アメリカは、何よりダイナミックな社会であることを選んだ。だから付いていけない落ちこぼれが相当数発生して、社会は荒れる。日本は、何より安定性を重視した。だから革新性には欠けるかもしれないが、社会は秩序が取れている。どちらが望ましいかは国民の選択による。

私なら、日本を選びますね。アメリカというモルモットが新しい技術やサービスを試して先行実験してくれる。それを横目に見て、上手く行きそうなら適度なスピードで取り入れる。でも移民の受け入れや社会の変革には時間を掛けて、拙速を避ける。フロントラインの目新しいプロダクトでは勝負できないかもしれないが、地味に裏方のキーパーツ・キーコンポーネント・製造設備・インフラでしっかり稼ぐ。それでいいんじゃないでしょうか。これからの日本のソフトパワー、つまりアニメ・漫画などのコンテンツから食文化に至るまで、日本カルチャーの影響力は更に増していくと思います。武力で相手をやりこめるのではなく、日本のファンを増やしていく。それが本当の太陽政策ですよね。日本の未来は明るいのだと若い人に思っていただきたい。これが2024年の所感です。

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